フリーランスの所得金額
私が、所得税法という法律を学んだのは、税務大学校でした。学生時代は、税理士を志していなかったので、勉強しませんでした。大学の授業にも租税法はありましたが、所得税法という科目はありませんでした。
大学卒業年次に、目指した資格試験に合格できなくて、就職先を得るために受験した国税専門官試験に合格して、税務署で仕事をすることになりました。
税務署に配置される前の4月から6月までの3ヶ月間税務大学校で、税法を学びました。配属先も決まる前の研修ですから、所得税法、法人税法、相続税法、国税通則法など基礎を学んだだけで税務署に配属して、実地調査に出かけることになりました。
所得税法の決算書
署に配属されて、初めて、青色損益計算書や収支内訳書を見ることになりました。
自分に払う給料がありません
最初に驚いたのは、お店や商売をやって自分に払う給料がないことでした。
ずーと企業会計を勉強してきたので、商売をやった利益は、給料を払った残りだと思ってきたのに、タダ働きして、利益を出せっというのか?
周りの先輩たちに聞くと
「生活費に課税するのが、所得税だ」と。
自分の労働は経費じゃない。
所得税法56条
親族が事業から受ける対価はないことになるよ。もらっている方も収入にはならないよ。
父の払った固定資産税や火災保険料などはあなたの経費にできます。
所得税法の特徴的な条文です。
世帯単位課税なんだと理解しないと読めません。
以下参考条文
(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
第五十六条 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
例外的に下記の専従者給与や専従者控除があるという位置付け。
専従者控除・専従者給与
家族がお店を手伝ってくれたら、青色なら、専従者給与が払える。これは、届出制ながら納得いくけど、「専従」という言葉がイヤラシイヒビキです。
もっぱら従事していることを、ことさら厳しく言います。
だから、昼間はパートに出かけて、夜記帳をやるなんてことにも、専従じゃないみたいことを言い出します。パート収入のほうが多いともっと難癖言われます。おーいタダ働きですか?
高校生や大学生の子供に手伝ってもらっても、他の学生を同じようなバイト代で落としたいところですが、理屈を言われて難しくなる。
みなし法人課税
もう知らない人が多いだろう。
自分に給料を払えないという不満を吸収する制度として、「みなし法人」課税制度がありました。
これは、青色申告会の人たちにすごく支持された制度だったと思います。
法人成りしないで、事業主の給与を控除できて、利益を申告する制度でした。
マニアックな計算しますが、利益からみなし配当所得を出したり、事業主報酬を給与課税したりしますが、調査で多額な非違があると恐ろしいほど多額の税金になったりもするのですが、真面目に適用するとこれまた節税効果が大きい制度でした。
1993年に廃止になりました。
赤字決算で申告すること
さて
最初にお話しした「生活費に課税するのが所得税」
ここに戻ります。
収入から経費を払ったら、残るものがない。
経費が正しければ、生活費(衣食住)はどうしたのか?
蓄えがあって取り崩した。
親や兄弟から援助を受けた。
借金をした。
所得税の決算というか課税は、生活費に課税するから、零細になると熾烈です。
借金や蓄えや援助がないと収入が正しいなら、経費が必要部分を超えて家事費が入っているだろうと追及されます。
収入に漏れはありませんか?
そうやってなけなしの所得金額が計算されます。
今は、これに消費税があるのですから、大変なことです。
一般の家庭でも物を買って消費税を負担しますが、預かった形にされた商店は、それを税務署に差し出す(納税)するワケですから、大変な痛みです。
まとめ
生活費に課税するのが、所得税。
決算が赤字になったら、
蓄えから取り崩したか
親兄弟から援助を受けたか
借金をしたか
追及を受けることがある。
今は、これに消費税の負担がある。
昔懐かしの「みなし法人課税」の小咄でした。