業種別事例研究 寿司屋編
回らないお寿司屋さん。
回るお寿司屋さんとは、提供するクオリティに徹底的な違いがある。お客様に満足していただき、リピートしてもらう店づくりができているお店。腕もよくなくては、リピート定着にはならない。回るお店との価格勝負では勝てないので、一つ上のクオリティーと満足感を与える工夫が必要。攻める素材が明確な店づくりがあることが顧客のリピートに繋がる。海鮮系の居酒屋のようになんでもあるじゃなくて、寿司屋のマグロを食いたいからこの店にくる、残業帰りに寿司屋のお刺身を食いたいから来る、客の求めるクオリティーと値段の折り合いがいい店づくり。
業種の特徴は、大部分が現金売上であり、非違事例は、売上脱漏または売上と仕入れ除外が多い。調査初動時に現場資料をどれだけおさえるかが調査のキモになる。
現金商売調査の一般的な概要
立地条件
駅周辺
一般の通行人を対象としているので、昼どき・夕食どきも需要がある。ランチは、店を知ってもらうチャンス。
ビジネス街
近所のサラリーマンが、主体で昼どきに客が集中する。ランチ定食の回転勝負。カウンター席必須。基本一人、2人が主体だから4人席は相席利用が前提。
準備調査
立地の確認、事業規模、客層、従事員数、メニューを確認するため、HPを閲覧する。HPがない場合は、食べログなどのサイト情報を確認する。
規模などによっては、事前の内観調査を行う。
決算書の費目別対売上比率分析表を5年間分作成し、各年の異常比率を抽出し、調査する科目の焦点を絞る。
調査年分以外の法定外資料でも、仕入れや掛売上資料は、現在でも取引がある可能性があるから収集先をメモする。
法定外資料とは、税務調査に入った際に、取引先との取引金額や決済状況を収集し資料せんにしたもの。
現金商売に共通した準備。
事前通知
臨場調査は、店舗に臨場して行えるように予約を入れることが重要である。
例えば、「臨場時間を9時からぐらいにして午前11時までにおおかたの初動調査を終える。昼どきの営業時間は、調査を中断し、客が引けた午後2時過ぎから再開して午後4時までに終える。」ような形で了解を取り付ける。
実地調査
初動調査
当日の仕込み数量、主要材料の在庫数量、米のお釜のサイズ確認、調査日の炊飯数、従業員氏名と役割を確認する。ゴミ箱確認必須。
現金監査と現金管理状況聴取
レジのつり銭の用意、店内の現金など、保管場所を漏らさず、店主のカバンを含めて全ての現金を確認する。
1日の初めから昼どきの売上、昼休み、夜の売上、最後に集計し、現金の保管、持ち帰り、または、銀行預け入れなど現金の流れを丁寧に聞き出す。
銀行に預け入れるまでの保管場所を直に確認する。
駅前店舗の実地調査事例
選定理由
駅前立地良好
差益率が3年目以降低調
SUV車購入
事業主勘定が少なすぎる
内観調査
昼ランチと夜に内観調査実施。
従事員数、レジ打ち状況、領収証発行など確認。
ランチは現金売上のみ。混雑時にレジ省略あり。
夜はカード売上あり。
予約の電話があると予約帳をレジ下から出して記入していた。
無予告臨場調査
仕込みの準備中に、無予告臨場調査実施。
レジ周りの確認を説得し、レジ周りの現況調査実施。
レジ下の棚に予約帳と日々の売上を記帳したノート確認(公表)。
ゴミ箱に昨晩の破棄注文伝票把握。
(ランチ営業後)
現金監査実施。
混雑状況により、ランチのレジ打ちは打ち漏れあり。ランチ後ランチ売上の現金を店主が引き上げ。
昨晩の破棄された注文伝票を復元し、夜のレジ打ち漏れも確認。
現金監査時に車のトランクに直近3ヶ月のレジ集計表があり、メモを確認。
メモには、レジ集計金額と違う金額の記入があり。
追及した結果、真実の現金売上金額であった。
公表ノートにはレジ金額を記載していたことを認めた。
「質問応答記録」作成。
調査結果
メモ書きの現金売上金額にレジ打ちしたカード売上を加算した金額が真実の売上になる。直近3ヶ月の伝票から漏れ割合を計算し、調査年分の売上金額を漏れ割合により推計して算定した。
店主のことば
開業から一年余は、毎日売上があることに一生懸命で記帳してきた。2年目は大幅な黒字決算となり、思ってもなかった税金となった。来年からは消費税も思ったら、なんとかしなければ払うだけで馬鹿馬鹿しいと思った。払うことに追われることが怖かった。
売上を落として申告することを思いついた。不安でいっぱいだったが、一年経ち申告も無事に出来て大丈夫なんだと思った。
お店の経営も常連客がつき、安定してきた。なんの不安も感じなくって来て、悪いことをしている意識もなくなっていた。クルマも買えたし、お金が溜まることが嬉しかった。
あまりの追徴金額に驚いた。ちゃんと申告したら、えらい金額になることが分かったけど、これでは、何も残らないだけじゃなくて、借金しなければ、払えない。
まとめ
自己判断での売上脱漏がバレた時の税負担は、よほど溜め込んだお金があれば払えますが、7年分の重加算税賦課の税金は大変な負担になります。税負担に対しては、適切な専門家の助言を求めていただくのが一番です。