続続続 Tさんのこと 国税との妥協は大失敗だった

特別調査
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続続続 Tさんのこと 国税との妥協は大失敗だった

ここまで、課税内容がただもれになってしまって、芸能活動も停止し、先の見通しも立たない状態になってしまっては、安易に、国税と妥協したことが、致命的でした。

無申告を繰り返してきたという負い目が、過去に遡及して、今の税務調査現場ではありえない不当な重加算税を喜んで受け入れる妥協をしてしまいました。

この重加算税は、決定通知を受けてから、3ヶ月間は、異議申立てなどを不服申し立てることができます。

芸能人という職業上、不服申し立てをしたり、さらに裁判で争うとなると、なかなか厳しい報道に晒されますから避けたいところです。

そう言ったところから、マスコミに晒されることなく、税務調査を終わらせて、納税を済ませる道を選ぶために妥協して受け入れた税務調査結果をリークされてしまった。

妥協は大失敗でした。

おさらい

報道から

2009年        法人設立

2010年3月期 無申告 2012年6月期限後申告

2011年3月期 無申告 2012年6月期限後申告

2012年3月期 無申告 2012年6月期限後申告→本件調査仮装隠蔽所得 500万円

2013年3月期 無申告 2015年7月期限後申告→本件調査仮装隠蔽所得 500万円

2014年3月期 無申告 2015年7月期限後申告→本件調査仮装隠蔽所得 500万円

2015年3月期 無申告 2015年7月期限後申告→本件調査仮装隠蔽所得 500万円

2016年3月期 無申告 2018年12月本件調査 約4000万円 無申告加算税賦課

2017年3月期 無申告 2018年12月本件調査 約4000万円 無申告加算税賦課

2018年3月期 無申告 2018年12月本件調査 約4000万円 無申告加算税賦課

3年ごとに無申告を繰り返してきた。

税務署からの指摘で期限後申告を提出してきた。

収入は1億5000万円クラス

個人的な旅行代や洋服代、アクセサリー代を経費として計上し、無申告加算税510万円、重加算税180万円を含めて3700万円を追徴された。

消費税および源泉所得税合計6500万円追徴。

フジネットワークニュースのスクープ

2018年12月に修正申告している→調査終了

自身の言葉(記者会見)2019年10月23日11時

わたしのだらしなさ怠慢によりまして

想像を絶するだらしなさルーズさによって

洋服代…劇場の仕事、テレビの仕事でも使っているから、衣装代だろうと判断した。旅行についても、いずれ仕事につながるかもしれないから、これは仕事かな? と考え、領収書を税理士さんに渡してしまったかもしれない

アクセサリーは時計。全部じゃない。

これらの私的な部分については、

税務職員から、【こちらで線引きをズバッと決めます】と言われ、従った。

(2019年11月3日現在)今回の調査が、所轄税務署でなく、東京国税局課税第一部資料調査課が担当したとの報道も見受けました。(査察ではありません)

検証3

いよいよ、本丸です。

重加算税が賦課されました。

それも、無申告の期間でなく、申告と言っても、期限後申告を繰り返してきた期間について調査年度を遡及し、その中で仮装隠蔽があったとして重加算税が賦課されました。

国税通則法 第68条

まずは、条文です。

(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
第1項は、過少申告加算税に代えて重加算税を賦課するときの条文です。

期限内申告してきた納税者が、重加算税をかけられるときは、こちらの条文になりますが、Tさんは、無申告を繰り返してきて、期限後で提出した年度の内容について、重加算税をかけられました。

第2項は、無加算税に代えて重加算税を賦課するときの条文です。

納税者が

国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を

隠蔽し、又は仮装し、

その隠蔽し、又は仮装したところに基づき

法定申告期限後に納税申告書を提出していたとき

具体的に

プライベート用の衣装を買いました

このままでは、経費にならないから

プライベートな衣装でなく、舞台衣装代としての領収証に書き換えました。(仮装

元の領収証を破棄または隠す。(隠蔽

帳簿に記載(計上)して決算をし、確定申告書を提出する。

50万円の時計を買いました。

時計の領収証のままでは、経費にできないから、

この領収証を時計でなく経費になる物品を購入した領収証に書き換える。(仮装

元の領収証を破棄または隠す。(隠蔽

帳簿に記載(計上)して決算をし、確定申告書を提出する。

ヨーロッパに旅行しました。

ヨーロッパの領収証では、経費にならないから、

ハワイでロケをした内容の領収証に書き換えた。(仮装

元のヨーロッパの領収証を破棄または隠す。(隠蔽

帳簿に記載(計上)して決算をし、確定申告書を提出する。

このように、仮装隠蔽があったら、重加算税が掛かるのです。

仮装隠蔽がないのに重加算税は掛かることはありません。

では、直近3年の無申告は

仮装隠蔽して無申告だったのではないとして、重加算税を掛けていません。

収入がないように仮装する行為を認定できないからです。

入金があった口座を隠して(隠蔽)真実の収入が見つけられないようにしていないからです。

会社名義の預金に入金しており、他人名義や架空名義の預金口座へ入金していたりしていないからです。

公表口座を見れば、申告義務があるのが、歴然だからです。

仮装隠蔽を立証できないから、重加算税を賦課しなかった。

重加算税の事務運営指針

法人税の重加算税の取り扱いについて(事務運営指針)

こちらは、平成12年7月に国税庁から各国税局へ通達された指示文書です。

今後は、重加算税について、統一的に組織的に対応していきますよという国税局税務署の判断を制御(取扱基準の整備等を図ったもの)する内容になっています。

では、内容をみていきましょう。

賦課基準
仮装隠蔽に該当する場合

通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」について

例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合と例示してます。

いわゆる二重帳簿を作成していること

決定的な事実ですね。

「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という事実があること

①帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること。

②帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。

③帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。

Tさんは二重帳簿作成していたか

作成してません。

領収証、原始記録、証憑などを破棄・隠蔽したか

破棄・隠蔽してません。

帳簿を改竄したか

帳簿改竄はありません。

帳簿への虚偽記載をしたか

帳簿への虚偽記載はありません。

相手方と通謀し虚偽の証憑を作成したか

相手方と通謀して虚偽の証憑は作成してません

帳簿の意図的な集計違算をしたか

これは、合計したら、1000万円になるのに、500万円とか記入することを言います、

これもしていません。

その他の方法により仮装の経理をした

たぶん、ここですね。

ここで自白した調書を作成したのでしょう。

東京国税局課税第一部資料調査課職員が

どんな内容の「質問応答記録」を作成して、重加算税の証拠としたか。

仮装隠蔽のブツがないのに重加算税をかけるには、Tさんの供述しかありません

それも、後日証言を変えられたら、アウトになるレベルの供述です。

仮装隠蔽のブツがないからです。

重加算税の対象をズバッと決める

ありえません。

一個一個仮装隠蔽を立証です。

「ほんとは、1000万おかしいけど、500万にまけときますから、重加算税対象です」なんて言葉で妥協したらこうなるよってことです。

検討結果 3

Tさんは、想像を絶するだらしない怠慢なルーズな人でした。

2009年に会社を設立しました。

2010年3月、2011年3月、2012年3月確定申告書を所轄税務署へ提出していませんでした。2012年5月末の期限にも出てこないことから、所轄税務署法人課税部門から「行政指導」で提出を促されます。

それに応じて、約1ヶ月で3年分の確定申告書を作成して期限後申告しました。(2012年6月)

また、

2013年3月、2014年3月、2015年3月確定申告書を所轄税務署へ提出していませんでした。2015年5月末の期限にも出てこないことから、所轄税務署法人課税部門から「行政指導」で提出を促されます。

それに応じて、約2ヶ月で3年分の確定申告書を作成して期限後申告しました。(2015年7月)

またまた

2016年3月、2017年3月、2018年3月確定申告書を所轄税務署へ提出していませんでした。

2018年5月になっても申告書が提出されないことから、(最新の情報によれば)東京国税局課税第一部資料調査課が税務調査に入りました。

仮装隠蔽をする時間があったか

めちゃめちゃ度を越したルーズな怠惰な面倒臭がりが、手間暇かかる仮装隠蔽しますかね。

領収証を書き換えると言っても、発行した相手先にお願いして(通謀して)作成しなければできません。

自分で工作するとなったら、それなりに知識や技術が必要です。

1ヶ月や2ヶ月の期間で、3年分の決算をするのに、手間暇かけて、領収証を仮装なんて出来ません。

それこそ、ある領収証を片っ端から入力して帳簿を作成して決算したと。

突貫工事の決算です。

この領収証、何に使ったかなんて考える時間もない決算です。

まとめ

資料調査課職員に調査されて、縮み上がってしまったのでしょう。

査察に送られるかもという恐怖もあったでしょう。

資料調査課は、重加算税を一番取りたい部署です。

何がなんでも、取りたい。

そういう伝統の部署です。

Tさんは

なんでもおっしゃる通りの課税を受けますから、マスコミに漏れることなく、終えて欲しい。

できる限り早く調査を終えてしまいたい。

納税資金は用意できるから、言い値で払います。

そういう一心で「ズバッと決めてもらう」妥協をしました。

だから、

仮装隠蔽でもないのに、仮装隠蔽を受け入れて、7年分の調査になりました。

なぜだか、マスコミにもリークされ、重加算税があることから、「犯罪人」扱いされてしまった。

妥協は大失敗です。

正当な調査であれば

調査対象年度は5年です。

加算税は無申告加算税です。

期限後申告の修正申告は無申告加算税がかかります。

これが基準になったら

こんな基準で重加算税賦課が横行したら、調査現場は大変です。

芸能人や有名人を抱えている税理士事務所は、かなり神経質にならざるをえません。

保守的な抑制的な決算をするしかありません。

なんのための、重加算税の取り扱い通達(事務運営指針)があるのでしょう。

供述調書である質問応答記録の作成がされたら、要注意です。

内容に納得いかないときは、署名押印を拒否できます。

ビビらないで拒否しないと重加算税がきます。