納税地
納税地とは
ひらたく言うと
個人が、確定申告をするとき、どこの税務署に確定申告署を提出するのか
という質問に対する答えです。
自分の納税地のある税務署に提出します。
納税地が決まる効果として、どこの税務署が、納税者を調査 (賦課や徴収を決定) する権限があるのかが決まります。
大原則は『住所』を管轄する税務署に確定申告書を提出します。
届け出書類の整理
納税地の異動届
納税地異動届⇨納税地の異動届
転居等により納税地(住所)に異動があった場合に、遅滞無く届ける書類です。手数料や罰則なし。
根拠条文(所得税法第20条、消費税法第25条)
納税地の変更届
住所と事業所がある場合に、下記の届け出をすることにより、住所に代えて事業所所在地を選択できます。
納税地変更届⇨納税地の変更届
国税庁HPから
住所を有する方がその住所地に代えて居所地を納税地とする場合、住所又は居所を有する方がその住所地又は居所地に代えて事業所等の所在地を納税地とする場合、又は、居所地又は事業所等の所在地を納税地としていた方がその納税地に代えて住所地を納税地とする場合の手続です。
国税庁HPには、提出時期について「特に定められていません(ただし、この届出書の提出があった日以後に納税地が変更されます。)。」⇨いつ出してもいい。
根拠条文(所得税法第16条、消費税法第21条)
事例研究
設定1
個人事業主Aさんの
事務所は、東京都豊島区池袋にあります。
住所は、埼玉県川越市にあります。
なにも届けないと
川越税務署へ納税地に『住所』を記載して確定申告書を提出します。
『納税地の変更届』を提出すると
納税地に『事業所所在地』を記載して豊島税務署に確定申告書を提出します。
さてAさんは、なんの届出もしないで、
平成25年分から豊島税務署に提出してきました。
(事前通知)
令和元年7月某日、豊島税務署個人課税部門の甲調査官から、「実地調査」に伺うと連絡がありました。
日程調整の結果、7月X日午前10時に事業所所在地に甲調査官が来ることになりました。
Aさんは、自分で会計ソフト○○会計を使って自力で確定申告書を作成して提出してました。
(実地調査)
7月X日、豊島税務署個人課税部門の甲調査官が時間通りに事務所にこられました。
Aさんは、調査を受けるのが初めてでしたので、非常に緊張してましたが、勇気を出して聞いてみました。
調査官
確定申告書に記載された内容の確認です
簡単にこのように答えるのが、マニュアルです。
調査官は、家族状況、略歴、事業履歴などを確認するように聞いてきます。
ある程度、下調べをしてきたようでした。
調査官
確認ですが、豊島税務署に申告されていますが、どうしてですか?
調査官
後日、争いになると困るので、「納税地」を確認する意味もあります。「納税地の変更届」を持ってきたので、記入押印をお願いします。
Aさんは、住所に代えて事業所を納税地とする書類を作成しました。
なぜ
甲調査官は、納税地を確認したのでしょうか?
調査を受けているさなかに納税地を異動されるのは防ぎたかったのでしょう。
本来、住所が川越市にあるのですから、誤って豊島税務署に提出されていて、川越税務署に提出物を[移送」しても良い案件かもしれません。
納税地が豊島署管内であることを確認してから調査を展開しないと詰め切らないうちに川越署に納税地があると主張されて調査権限が無くなってしまう可能性があります。
設定2
『納税地の変更届』を提出しない
調査官
Aさんは、住所が川越市で、事業所が豊島区ですので、納税地は原則川越市の住所になります。この川越の住所に代えて、豊島区の事業所を納税地にしたいときに提出していただくものです。
選べるんですか。川越税務署も家から近いので、川越税務署にします。
調査官
Aさんが今まで、豊島署に提出したものは、川越署へ移送します。
「川越税務署を選択」は、拒めませんので、調査は打ち切り。
移送手続きをして、事績を川越署に引き継ぎします。
川越署において、あらためて、調査選定して、実施するかどうかを決めます。
実質的に、調査延期ですね。
悪用してはいけません。
自分で申告内容を検討して、間違いを見つけたら、速やかに、川越署へ修正申告書を提出しましょう。
たぶん、自主扱いの修正申告書になりますので、加算税免除です。
延滞税は千円以上であれば当然払うことになります。
更正を予知しない修正申告
自主修正申告と言います。(国税通則法第56条⑤)
なぜ更正を予知しない修正申告書になるのでしょうか。調査権限のある税務署の調査があって、具体的な非違事項の指摘があったときに、『更正を予知する』段階に入ったと考えるからです。非違の指摘を受ける前に提出した修正申告書は、『更正を予知した』修正申告書には当たりません。
平成28年分以後は、事前通知後で非違指摘前に修正申告したものには、更正を予知した修正申告に課す加算税より5%少なくした計算をすることに法改正がありました。このケースで言えば、豊島署A調査官の事前通知をどのように考えるかで、代わりますが、調査権限のある川越署が、調査担当者を決定し、事前通知して、実地調査着手する調査手続きが必要になると考えられます。
設定3
事業所得者が無申告であった場合
納税地を管轄する税務署に調査権限があります。
調査対象者の、お店が渋谷区、住民登録が板橋区であれば、普通、調査権限は板橋税務署にあるとしますが、板橋区は親の住所で、事実上は、彼女と豊島区内のマンションで同棲していたということもあります。
こういう案件が増えてきてます。
広域担当という調査権限をもつ調査官がいます。この調査官の身分証明書と質問検査証には、管轄する税務署が複数記載されております。
まとめ
住所と事業所がある場合、『納税地の変更届』を提出して、事業所の所在地を納税地として確定申告書に記載して事業所を管轄する税務署に申告することができる。
住所と事業所がある場合、何もしなければ、住所を管轄する税務署に確定申告書を提出する。
過去の確定申告書の修正申告書を提出するときは、過去に出した税務署に提出するのではなく、提出するときに、住んでいる住所地(又は届け出をした事業所所在地)を管轄する税務署に提出する。
補足
納税地外住所(事業所)という管理
税務署の資料収集は、最終的には、納税地に集約するシステムになっているが、収集される資料せん一枚一枚は、様々に媒体から収集される。その中には、納税地が分からないまま収集されてくるものもある。現実社会は、納税地以外の住所であるとか事業所であるとかいうものが複数あるのが経済実体である。それらに対応するために「納税地外住所」「納税地外事業所」がある。